コラム 「あなたはだあれ?」から読み解く認知症

「あなたはだあれ」という作品をご存じだろうか?


これは「ウルトラセブン」第47話に当たる作品です。


ある日の深夜、団地の住人であるサトウが自宅に帰ると、奥さんは「どちら様?」とまるで他人のように振る舞う。

困惑するサトウですが、自分の子供もお隣さんも顔見知りの警察官までもサトウのことを知らないという。

突然の出来事に困惑しながら団地を去るサトウ。

しかし夜が明け昼になると、サトウの家で主人が帰ってこないと騒ぎになっていた!


というSFチックなセブンらしいストーリーなのです

結局この件はフック星人の仕業で、夜になると団地ごと地下に埋め込みんでおり

その代わりにフック星人が住民に扮していたということなのです。


この話の背景には放送当時話題だった「団地」の存在があります。


右にも左にも、上にも下にも同じような部屋が並ぶ団地。

団地住まいが増えるにあたり、団地の中で迷子になるということも当時はあったと聞きます。


自分の家と寸分変わらないのに、自分の知らない場所になる恐怖と孤独。


「あなたはだあれ?」は没個性化していく団地生活から感じる怖さをSF的な要素を加えて訴えている作品だと思います。


そんな「あなたはだあれ?」ですが、今回は私自身が感じた全く別の視点でこの話を読み解いていこうと思います.


 今回取り上げる視点というのはズバリ「認知症」です。

2012年時点で約420万人、65歳以上の約7人に一人という数の患者数がいると推定される認知症。

 TVのニュースや医療番組で取り上げられることも多く、皆さんも最近よく聞くことがあるんじゃないでしょうか?


 認知症の症状の1つに「見当識障害」というものがあります。

 簡単に説明すると、「自分のことや自分のおかれている状況について認識する能力に障害がある状態」のことです。

 自分の名前や年齢、日時、曜日、住まいの場所、親しい人の顔などが分からなくなるといったことが起こります。


 さて、ここでちょっと想像してみてください。

 見当識障害を持つ方がどんな風に世界を感じるのか?


 自分の家族の顔が分からず、自分の帰る家も分からない

 ここがどこで、今いつなのか、周りにいる人間は誰なのか?


と、ものすごく孤独を感じ、不安を覚えるんじゃないでしょうか?



 では、「あなたはだあれ」に話を戻します。

 私は劇中に登場したサトウが感じたことは認知症で見当識障害を持った方が日ごろ感じている不安や孤独感と同じようなものだったんじゃないかと思うのです。


 自分が当たり前にそこにあると思った家族や家がなくなている。

自分だけが日常の世界とよく似た別世界にやってきてしまったような孤独感と不安、恐怖。


 一方は病によって、もう一方は急増する画一的な団地と理由も時代背景も全然違いますが、「自分にとって大切な居場所が分からなくなる」という点では共通していると思います。


最後に

認知症を患っている方の気持ち、見えている世界を理解することは、本人以外の人間にはとても難しいです。


故に、こういったフィクションを利用して、少しでも気持ちの理解に近づけられればと強く思います。