全てを守るか壊すか 仮面ライダーアマゾンズ 最期ノ審判感想

2016年からAmazonプライム・ビデオで配信されていた『仮面ライダーアマゾンズ』


平成ライダーシリーズ初期のメンバーが、ニチアサの縛りを外れたネット配信という場で展開してシーズン2まで製作されてきた『アマゾンズ』が劇場版で完結します。


それこそ『仮面ライダーアマゾンズ 最期ノ審判』です


本日公開初日を迎え、アマゾンたちの最後を見届けてきました。

今回は映画の感想を踏まえながら、『アマゾンズ』シリーズを振り返っていきます。


以下『仮面ライダーアマゾンズ 最期ノ審判』のネタバレを含みます。







アマゾンズの最後に描かれたのはシリーズを通して描かれた「他の生き物を食うことの是非」「生まれてきたことの罪」そしてそれらをめぐる水澤悠・仮面ライダーアマゾンオメガと鷹山仁・仮面ライダーアマゾンアルファの信念のぶつかり合いとその決着でした。


今回の映画に登場したものに「アマゾン牧場」があります。


人を食らう本能を持ったアマゾン細胞が人型に成長したアマゾン

それを人間が食べるための家畜として生産・出荷している場所でした。


人間を食う存在が出てきた場合、それは正義なのか悪なのか?生み出されてしまったものに罪はあるのか?という問題は各シーズンで描かれてきたテーマでしたが、この映画ではさらに段階を上げた存在としてアマゾン牧場が登場します。


守りたいものを守るという信念のもと、人を食わないアマゾンを守ってきた悠は牧場の存在に憤ります。


しかし、生み出されたアマゾンたちは自らの運命を知っており、人間に食われることを受け入れている状況を見て戸惑います。


それは悠のやってきた行いが正義ではなく、自分が守りたいというエゴである限界を突きつけることでした。


やがて出荷された先で生きたいという思いに目覚め人間を食ってしまうムクという少女のアマゾンが登場しますが、そのことが正しいことかどうかは映画では描かれません。


彼女の存在がきっかけで家畜としての生き方に疑問を感じたアマゾンたちは園長として彼らを管理してきた御堂・アマゾンネオアルファによって虐殺されてしまいます。


ネオアルファと闘う悠・アマゾンオメガですが、敗れてしまったことで悠はある一線を越えることになります。


すなわち瀕死に陥たムクを食べるということでした。


人を食べないアマゾンは守り、食べてしまったアマゾンを倒してきた悠にとって自身の信念を根底から覆す事態でした。



一方もう一人の主人公である鷹山仁にも過酷な運命が待ち受けています。


なんとアマゾン牧場で生み出されたアマゾンたちは仁の細胞を使って生み出されていたのでした。


人を守るために、アマゾンをすべて狩る決意で戦い続け、そのために自分の子である千翼さえ手にかけ、愛する人七羽を失った仁をさらに追い込む運命でした。


そんな仁も戦いの中で自分の信念の一線を越えてしまいます。


ネオアルファと戦い、死闘の末ネオアルファを倒す仁ですが、それこそ守ると決めた人間を殺すとことでした。


どんな悪人でも人間は守り、たとえ子供でもアマゾンは殺すという信念がついに限界を超えてしまった瞬間でした。


己の信念の限界を超えてしまった悠と仁。


そこにもはや正義などなく、執念となり果てた2人の激闘が最後に始まります。




血みどろの激闘の末、戦いを制したのは悠でした。


この結末を悠が正しいから勝ったと考えるのは浅はかでしょう。


その命を燃やし尽くした仁は七羽の幻影に看取られ、ようやく穏やかな瞬間を迎えることができました。


勝った悠も一度は命を絶とうとしますが、「生きて」と呼びかける美月の幻想に呼び止められ踏みとどまります。

生き延びた悠ですが、生き残った牧場のアマゾンたちと彼らと生きることにした美月の姿を見届けて一人去ってゆきます。


人を食べる存在が出ていた場合、その存在は生きているだけで悪なのか?

生きようとするものを守ることと人間を守ることのどっちに正義があるのか?


アマゾンズが突きつけ続けてきたテーマの終着として本当に限界まで踏み込んだ作品だと見終わった僕は思いました。


バイオレンスさやグロテスクな部分に目を奪われがちですが、本質であるこのテーマを逃げずにより深く描き通した製作陣は本当に素晴らしいと思います。


また、異形の存在が異形故に正義を探しながら孤独に戦うというのは、実に仮面ライダーらしかったです。


この映画は人によって心に残るものが違う作品だと思います。


悠に共感する人。仁に惹かれる人。

アマゾンに同情する人も嫌悪する人もいるでしょう。


あなた自身の目で見届けて、この映画のメッセージを受け取ってほしいです。


ライダー初の4Dは変身シーンや戦闘シーンで大いに発揮され、劇中の迫力を何倍にも膨らませてくれました。


まさに劇場で楽しむべき映画だと思うので、ぜひ劇場に足を運んでみてください