本当の戦いはこれからだ!ウルトラの光の中に見る熊本大震災後の生き方
4月14日に発生した地震に端を発する熊本地震は熊本県を中心に大きな被害を残っています。多くの建物が倒壊し、たくさんの人々の日常が失われてました。5年前の東日本大震災の復興もまだ終わっていない中で起きた震災。傷ついた心身を癒し、失われた生活を取り戻していく。地震の被害を直接受けてない方々も含め、私たちは大きな被害を受けた震災後の世界の中で生きていかなければいけません。
いかに震災後の世界と向き合い、生き方を見つけていくか?そのことについて今回は1本の特撮作品を通して考えいきたいと思います。
その作品は『ウルトラマンサーガ』です。『ウルトラマンサーガ』は2012年3月24日(土)に全国公開されたウルトラマンの映画です。
ウルトラマンシリーズ45周年作品として作られた本作は公開当時メインで活躍していたウルトラマンゼロ、TVシリーズ15周年を迎えたウルトラマンダイナ、TVシリーズ10周年を迎えたウルトラマンコスモスの3人のウルトラマンが登場します。
本作の舞台となっている地球は、かつてウルトラマンたちが活躍したどの地球とも違う(シリーズによって世界観が違うので、地球=宇宙にも様々な種類があります)もので、侵略者バット星人によってほぼ全ての生物が消し去れてしまいました。ゴーストタウンと化した町には、バット星人が別の宇宙から連れてきた怪獣たちが跋扈しており、数少ない生き残りである女性メンバーだけの防衛チーム:チームUが子どもたちを守りながら、反抗しています。
そこに、宇宙を旅していたダイナが助けに現れ、ダイナの声に導かれ、ゼロとコスモスもこの地球を訪れます。そして3人のウルトラマンは地球を救うためバット星人とバット星人が育てた最強の怪獣兵器・ハイパーゼットンに戦いを挑みます。
『ウルトラマンサーガ』は東日本大震災後に作られた作品なのです。ウルトラマンを圧倒する強敵。侵略者によってほとんどの生物が消えた世界。わずかに残された女性たちが子ども達を守るために必死に戦っている。地震・津波という圧倒的な自然の脅威に町を壊され、多くの命を失い、生き残った人々が必死に生き抜いていこうとする震災後の世界と非常に重なり、連想させる作品になっています。
私達と同様、とてつもない脅威にさらされた世界にあって登場人物たちは、必死に生き抜こうと戦っています。そして、彼らの戦いと生き方の中に震災後を生きる私たちの生き方のヒントがあると考えます。今作の防衛チーム:チームU。実は、彼女たちは防衛チームなどではなく、看護師・OL・整備工など戦闘には素人の一般人が、バット星人の侵略から逃げてきて、たまたまその後の基地となる格納庫に集まっていたところ、親を失い路頭に迷った子ども達が地球防衛隊と勘違いしてしまい、子ども達を助けるためとっさに嘘をついて出来たのがチームUだったのでした。
ウソの防衛隊に過ぎない彼女たちでしたが、助けを求めた子ども達の為、まともな戦力などない中で必死に戦い続けていたのでした。ウルトラマンたちも同じです。今回の敵であるハイパーゼントンは、3人のウルトラマンが束になって手も足も出ず、一度は完全に敗北します。
しかし、彼らは決して諦めません。その強い思いは奇跡を呼び、3人のウルトラマンは融合、新たなウルトラマン:ウルトラマンサーガが誕生し、ついにゼットンとバット星人を倒し、平和を取り戻します。
なぜ、彼らはほとんどの生物を消し去るほどの脅威からを打ち破ることができたのか?
なぜ、何度打ちのめされても、諦めず立ち向かうことが出来たのか。
私は2つの大きな理由があると思います。それは「守れるもの」と「絆」です。
ただの女性であるチームUのメンバー。戦闘なんてろくに出来ず、相手はほとんどの命を消し去り、怪獣を操る侵略者です。それでも絶望せず戦うことが出来たのは、彼女たちには彼女たちを頼ってきた子ども達という、守らなければならない存在があったからです。彼女たちがいたからこそ、子ども達は今まで生き残ることが出来、そのことが彼女たちの希望になっていました。
また、チームUのメンバーを演じたのが当時のAKB48に所属していたメンバーというのも象徴的だと個人的に思いました。彼女たちの演技はけして上手いものではありませんでした。けれど、与えられた役に真摯に取り組んで一生懸命取り組んでいました。特別な才能や能力がないとしても、懸命に頑張る彼女たちの姿は、まさしくチームUそのものでした。「守れるもの」「守るべき存在」はウルトラマンも同じです。
主人公:タイガ・ノゾムはかつてウルトラマンが両親を助けられなかったことがトラウマとなっており、ウルトラマンへの変身を拒み続けます。しかし、チームUの子ども達を守るため自分に出来ることを必死にする姿が、彼をトラウマから克服させます。
そしてもう1つ。震災後多く口にされ、震災の年を象徴する言葉となった「絆」。「絆」は『サーガ』においても非常に大きな意味を持って描かれます。チームUのほとんどが何の繋がりもない、偶然出会った女性たちの集まりですが、子ども達という守るもの為、絆を結びます。
ウルトラマンにおいても、出身も個性も全く違うゼロ・ダイナ・コスモスという3人のウルトラマンの絆によって生まれたのが、ゼットンを倒すほどの強さを持つウルトラマンサ-ガを誕生させたのでした。そして、何よりウルトラマンと人間の絆。人間とはけっしてウルトラマンにただ守られるだけの存在ではなく、力を合わせて戦える存在であることをこの絆は証明しています。ゼットンに敗れ、光を失ったウルトラマンダイナに再び光をもたらしたのは、ダイナの復活を信じる少年でした。
ついにクライマックス、拮抗するウルトラマンサーガとハイパーゼットンとの戦い。この状況を打破し、サーガに勝利を呼び込んだのは、チームUが仕掛けた爆弾トラップを使ったサーガとチームUの連携作戦でした。彼らの戦いは、未曽有の大災害を経験した私たちの生き方を示してくれていると感じます。自分に出来ること。どんなに小さいことであっても、それが誰かの支えとなり、力になることを信じ、誇りを持って活動し続けていくこと。たとえ出身や経験、個性がバラバラであっても、その壁を越えて共に手を取り合い、絆を育んでいくこと。その力は決して1人では太刀打ちできないような、大きな脅威でも乗り越える力を生む。
震災はまだ終わっていません。まだまだ問題は山積みです。復興したと言えるのが何年先になるか分かりません。けれど、1人1人が現実と向かい合って、手を取り合うことが出来れば、きっと乗り越えられるはず。
だから、諦めるな。未来を信じて。共に生きていこう。
ウルトラマンサーガの雄姿は私達にこう語りかけているように感じます。彼らの光に追いつけるよう、私たちも生きていきましょう!!最後に『ウルトラマンサーガ』を象徴する言葉で〆たいと思います。
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